これに関連して、
もちろん、個々のビジネスパーソンの能力も大いに関係してきます。たとえば「相手の求めていることをくみ取る力」や「相手に寄り添うコミュニケーションの仕方」は、個々の経験や人柄、学んできた知識などによって差が出やすいところでしょう。ただし、能力というとどうしても「自分にはセンスがないから……」と引け目を感じる人もいるかもしれませんが、実はこうした力は“磨かれる”ものでもあります。
たとえば、普段のちょっとした会話の中でも、相手が話している際の表情や声のトーンに注意を向けてみるとか、言葉の裏にある感情を想像してみるといった工夫を続けるだけで、徐々に「感じ取る力」が育っていきます。また、相手の希望に対してどんなアプローチをしたらいいか悩んだときは、遠慮せずに質問してみたり、過去の事例を調べたりすることで「最善策を見つける力」が少しずつ身についていくはずです。
さらに、「能力がある=誰でも上手くできる」というわけではありません。むしろ相手を喜ばせることを当たり前の感覚として捉え、その先にある可能性を探っていく姿勢こそが、真の意味での能力といえるのではないでしょうか。実際、同じ商品を提案するにしても、機械的に説明だけで終わる人と、相手のニーズや事情を的確にとらえ、しかも「こんな使い方もありそうですよ」と提案できる人では、相手の受け取る印象が大きく違います。そうした差は確かに「能力」と呼ばれるものですが、それは元々備わっていた才能というより、日々の仕事やコミュニケーションの積み重ねによって培われるものなのです。
一方で、個々のビジネスパーソンの能力を発揮しやすい環境を会社としてつくっていくことも重要です。「もっとこうしたら、お客様が喜ぶのでは?」と思いついたときに声をあげやすい雰囲気があるかどうか、現場での気付きや工夫を尊重してくれる上司や同僚がいるかどうかといった点は、個人が能力を存分に生かすための大きな要素になります。つまり、個々のビジネスパーソンの力が大切なのはもちろんですが、それを後押しする企業文化があってこそ、本当の意味で「相手を喜ばせる」行動が根付くのではないでしょうか。
いずれにしても、能力の差を言い訳にしてしまうのはもったいないことです。「どうやったら相手に喜んでもらえるだろう?」という発想で、少しずつ工夫を重ねる中で、自分なりのやり方や得意技が見つかっていく。それは日々の取り組みの積み重ねであり、そしてそれこそが、ビジネスパーソンの成長を大きく左右する鍵になってくるのではないでしょうか。