先日、昇格論文の代筆の件で、「ウィンウィンの関係」という言葉を使いたい、というご要望をいただきました。
お話を伺ってみると、少し使い方が違っていると言いますか、それはウィンウィンの関係というより、自分のメリットを考えているだけかも、というお話がありましたので、細かやかにその使い方をお伝えしました。
今回はこの「ウィンウィン」の使い方をお伝えしたいと思います。
例を挙げてみます。
営業担当者から、あれこれ説明を受けて、実際に乗ってみたところ、とても乗り心地が良かったので、この車に心が傾きかけていた。
しかし、試乗を終えて、店内に入った時に営業担当者が言った一言でこの男性の心は冷めた。
「3月中に納車できるようにします。お互いがウィンウィンの関係でいきたいと思っています」
年度末に差し掛かってきていたため、営業担当者は自身あるいは自身が勤める店舗の成績を考え、なんとか3月中に納車したかったのだろう。
早く納車することで、それが私(営業担当者)とお客(男性)にとってウィンウィンの関係になる、と。
いぶかしく思った男性は、結局、この店舗で購入することはなかった。
この営業担当者は大きく間違えています。
最終的に車を購入するのは男性の意志によりますので、(買わなかったという)結果は問題ではありません。
問題は、営業担当者のいわゆる営業トークです。
あなたなら、何が問題かお分かりになると思います。
これは、ウィンウィンの関係ではなく、営業担当者が先走り過ぎです。
店舗とお客(個人客)の関係性では、原則、お客に買っていただくことで店舗側のウィンになります。
お客から見れば、店舗側に車の代金を支払うことで、店舗側へウィンを提供しています。
店舗がお客に対し、車を購入していただくこと以上を求めたら、それはウィンウィンではなく、店舗の自己都合です。
がしかし、上記の例で営業担当者は頼んでもいない早期の納車を持ち出し「お互いがウィンウィンでいきたい」と言いました。
男性は、意識的にか無意識的にかは分かりませんが、感じたはずです。「なぜ、車を購入すること以外のことをこちらに求めて、それで同等とするんだ」と。
本当にウィンウィンの関係にするのであれば、営業担当者は少なくとも、大幅な割引を提示したうえで、こういうべきでした。
「10万円値引きをさせていただきますので、なんとか3月中に納車させていただけませんか?」
どれほどの値引きの額が妥当かどうかは男性の気持ちによりますが、「譲歩をしてお願いをする」のが今回のケースの正しい伝え方です。決してウィンウィンという表現は使っていませんが、結果としてウィンウィンになるといいなあ、という使い方です。
「ウィンウィン」を使う場合は、このあたりをお考えください。