先日、お客様から報告書、それも少し話がややこしくなりそうな報告書の作成のご依頼をいただいた。
状況としては、
1、お客様は看板の制作と施工を行う会社
2、取引先である不動産会社が運営するコインパーキングの誘導看板を製作・設置した。
3、強風にあおられ、その看板がはずれ通行人に直撃
4、取引先は、お客様の施工ミスを疑っている。
5、実際には、取引先が安価に仕上げるために既存の管に看板を設置するように言った。
6、お客様は、その管を使うと強度が弱いため良くないと思ったが、お客様のたってのご要望だったため、それは伝えず、そこに設置した。
7、お客様としては今後もお取引をいただきたいため、全面的にこちらが悪い旨の報告書を作成し、提出しようとしている。
8、本当のところは、取引先がその管に設置してほしいと言ったのだから、それでは危ないと言わなかったお客様にも非があるが、設置せよいった取引先にも非がある。
冷静に判断する
ポイントとしては、今後のお取引のことを考えると、7の「お客様としては今後もお取引をいただきたいため、全面的にこちらが悪い旨の報告書を作成し、提出しようとしている。」は正しい。
しかしいっぽうで、
もし負傷した通行人から多額の慰謝料を請求された場合、取引先はお客様に責任を負い、その慰謝料を支払わせようとする可能性がある。
感情的に「どうしてうちが慰謝料を支払わなきゃならないんだ!」となるのではなく、冷静に今後の取引継続のことと慰謝料を支払わなければならない状況を回避すること、その両方に注目することが必要になる。
「どちらがより損をしないか」で決める
つまり、全面的に自社の責任として謝罪の意図を報告書に盛り込んだ場合、多額の慰謝料を支払わなければならない可能性がある。他方、一定程度、取引先にも責任がある意図をもって報告書を作成すると、慰謝料の支払いは減額できるかもしれないが、今後の取引への影響が必至となる。
どちらをとってもリスクがあるのであるが、そのリスクに対してできるだけヘッジ(防衛)しようとするのが合理的であり、正解だ。つまり、「どちらがより損をしないか」で考えるということだ。
今後の取引を中心に考えてみよう。
多額の慰謝料の支払いを回避するため、報告書には取引先にも責任があるという趣旨の文言を入れる。それにより今後の取引がなくなった場合、それは痛手であるのかそうではないかで判断する。これはお客様の会社の財務状況にもよるだろう。年間100万円であれば「別にいいや」となるかもしれないし、年間300万円であれば「今回は泣いておいて、年間の受注を確保しよう」となるかもしれない。
また、通行人が負傷した原因がお客様にもあるのは明白であるため、慰謝料の全額支払いはないにせよ、一定程度の支払いは必要であり、そのことも加味する必要がある。
「損して得取れ」なのか「損切り」なのか
そして多額の慰謝料の支払いを中心に考えてみよう。
ここで重要なのは、多額の慰謝料を支払わなければならない可能性がどれくらいあるのか、ではなく、可能性がある時点でそれは十分なリスクである。可能性が50%だからダメで、10%だから良いというものではない。その可能性は主観に過ぎないからだ。
また、「多額」かどうかも重要な要素だ。100万円だと高すぎるが、20万円なら問題はないなど、なんとなくの感覚ではなく、今後の取引において得られる収益も考慮に入れて、「損して得取れ」なのか「今後の得がないので、損をしたくない」なのかを決める必要がある。
どちらが正しくてどちらが誤っているわけではない。「どちらを取るか」を決めるのは当事者である。
大事なのは感情を入れずに淡々と決めることだ。そのうえで、報告書に盛り込むべき文言が見えてくる。
なお、ご依頼いただいたお客様は、多額の慰謝料の支払いを回避するため、報告書には、お客様にも取引先にも責任を有する書き方を採用し(間接的で絶妙な書き方。当社が作成した)、結局、慰謝料が30万円で取引先と折半して(15万円ずつ)支払うこととなり、取引も継続することになった。なんでも、取引先の役員が物分かりの良い人だったらしく、今回の事を機に、より仕事が増えそうだとのことだった。
15万円の負担で、今後の取引が強化されたよいケースだった。
表現の仕方には、技術とコツが必要です。
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